木彫作品の制作過程 Processes on carving wood sculptures, some steps of them. Step 5: Hollowing out. その5:内刳(うちぐ)り

こんにちは。ATELIER KOTAROUの柳田です。

ここ数日は連日雨が一日中降り続く、梅雨真っ只中の日々。これから本格手的な夏に差し掛かっていくので、皆様どうぞ体調管理に気を付けて下さいね。

さて、今回記事では前回記事④:仕上げ彫 に次ぐ作業工程である⑤:内刳り(うちぐり)についてご説明させていただきます。木彫の制作過程も、いよいよ佳境に入ってきたといっても過言ではありません。

前回記事でも少しご説明させて頂きましたが、この内刳りを行うことにより、様々な利点が木彫の作品にもたらされます。簡単に列挙させて頂くと、

①:内刳で作品木材の芯を取り除くことにより、作品の“割れ”を、長期的に防ぐことができる。

(木彫作品の割れの最たる原因は、木材の芯を原因とする割れです。よく、切り株の断面を観察してみると、真ん中の芯の部分から割れが広がっていっているのが観察出来ると思います。)

②:作品内部の木材が取り除かれるので、作品の軽量化、及び強度が強化される。

(意外に思われるかもしれませんが、特に円筒形の物体というのは、仲が詰まっているものよりも、中が空洞のものの方が強度が強い、ということが分かっています。例えば、建築現場などで使われる鉄パイプを観察してみると、みな中が空洞になっていることがわかります。あれは鉄パイプの軽量化と強度という利点を両方得られる優れた知恵なのですね。)

それに何より、作品を搬入出する時に、軽いほうがとっても楽です!^^

③:作品木材の乾燥スピードを作品の外側、および内側で均一にすることができる。

(作品の割れの大きな原因の一つが、先述の木材の芯からくるもの以外では、作品全体中の部分部分で乾燥のスピードが不均一に進んでいくことが挙げられます。

所謂「収縮率の差」といわれるものが原因となる「割れ」になります。

これはもちろん木材という物質に限らず、例えば、成型した後乾燥をさせている陶土などにも見られる物理現象になります。

この収縮率の差をできうる限りなくしてあげる、つまり均一にしてあげることで、作品全体における割れを抑えることができます。

これは、陶土においても全く同じことが言えます。

木材においては内刳をしていない状態では当然空気により触れている作品表面部分、つまり外側のほうが、乾燥のスピードが内側、つまり内部よりも早くなるので、それが収縮率(乾燥スピード)の差となって、作品により割れが生じやすくなるということです。

これを一旦内刳をすることで作品の内側にも空気を触れやすくしてあげることで作品内外での乾燥スピードの差が内刳をしない状態、つまり作品内が木材で詰まっている状態よりも均一になり、作品木材の割れをより防ぐ結果となるのです。

このことは、陶土作品を成形した際の厚みをなるべく均一にすることで作品乾燥時の割れをより防ぐことができる、ということと同じ理屈です。)

以上のような利点が得られることから、内刳は可能であれば必ず行ったほうが良い作業工程になります。

それでは、順を追ってご説明して参ります。

⑤:内刳 作品の内部を電動ドリル、チェーンソー等を用いて刳り貫く。

作品を寝かせて、内刳をする面を確保します。作品保護のクッションを敷くことをお忘れなく・・・。

まず初めに、チェーンブロック等を用いて、作品の内刳作業がしやすいように、作品の刳る面を確保するために、作品を上の写真のように寝かせます。この際、作品の重みでせっかくの作品の細部の彫が台無しにならないように、使わなくなった古い布団やクッション等を敷いて下さい。また、※例えば今回の例のような大型の作品の姿勢を変える際は大変危険ですので、くれぐれも注意を払いながら、作業を行って下さい。疲れているときや何か心配事で上の空の時は、この内刳作業を行うことは、残念ながらお勧めしかねます。怪我をするリスクが高まります。また、日を改めて、元気な時に行いましょうね!^^

そして、これは何よりも(今回の木彫の制作過程シリーズのみならず、全てにおいて)大切なことですが、もし何かあったら、必ず作品なんかよりも、ご自身の身体、及び健康最優先です。貴方の命と健康はこの地球よりも遥かに大切なもの。作品など、言わずもがな。綺麗ごととは決して言わせません。

作品は、またいつでも作り直せます!^^

手前の方から①:穴あけ ②:チェーンソーでの削りを繰り返していく。

①:電動のドリルでどんどん穴を開けていきます。穴をある程度開けたら、②:穴と穴をチェーンソーでつないでいくイメージで、木材をどんどんはつっていきます。

また、チェーンソーをうまく使いこなしながら、作品内壁を削り取っていきます。イメージとしては、チェーンソーで作品内部を彫る感じです。

※この際、電動ドリル、特にチェーンソーの取り扱いには、くれぐれも細心の注意を払って、内刳作業を進めてください。繰り返しになりますが、くれぐれも疲労がたまっているとき、心配事で上の空の時は、この作業を延期するか、他の危険でないことを行って下さい。

加えて、作業の合間合間での電動ドリル、チェーンソーの保守点検も絶対に怠らないで下さい。

「内蓋」(うちぶた)をのこぎりで切り出す。

作品底面からの内刳を終えたら、次は作品の後頭部からも内刳を行うために、上の写真のように「内蓋」(うちぶた)を作ります。

これは、のこぎり等を用いて、例えば作品の背面といったなるべく目立たない所に施します。上の例のように断面が直角に交わるように内蓋を切り取ってあげると、やりやすいです。

①:ドリルで穴開け ②:チェーンソーでの削り を、底面同様背面からも行う。

底面からの内刳同様、まず電動ドリルで穴を開け、チェーンソーで作品内側を削り取っていきます。

※この際、ドリルの刃やチェーンソーの刃が作品表面に飛び出していないかこまめに確認しながら、作業を進めて下さい。あくまで、表面の形優先です。

内蓋をエポキシ系樹脂接着剤で圧着して戻す。この際、ゴムバンドを用いると、内蓋の圧着、固定に便利。

最後に、エポキシ系樹脂の接着剤等を用いて、作品の内蓋を再び作品に接着して戻します。

この際、ゴムバンド等を用いて接着面を圧着すると、圧着しない場合よりもより強く接着することができます。

また、接着完了まで内蓋を固定することができます。

今回記事は以上になります。

次回記事ではいよいよ⑥:仕上げ についてご説明致します。

今回も最後まで読んで頂き、誠に有難う御座いました!

今後とも当atelier kotarouは皆様の暮らしと気持ちを少しでも明るく、そして豊かなものにするお手伝いをさせて頂くべく日々何かその様な有益なものを作品、ウェブサイト等を通して皆様に提供させて頂ければ幸いで御座います。

今後とも、当atelier kotarou及び彫刻家柳田憲児を何卒宜しくお願い申し上げます。  柳田

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