陶芸作品型取りのための石膏雌型の製作方法 the techniques of the way how to make plaster moulds for the cast potter´s clay articles from the clay prototypes.
石膏の雌型の製作は、①粘土での原型制作→②石膏流し込みのための粘土を用いた土塀作り→③石膏流し込み→④石膏雌型の完成の4ステップです。
こんにちは。atelier kotarou の柳田です。今の時期から2月にかけて、年間で最も寒くなっていく時期。atelier kotarou のお庭に飛来する鳥たちのための水浴び場の水が凍結するくらい、とっても寒い今日この頃。
そんな水仕事が最も辛い今の時期より、暖かい時期にぜひ取り組むべき技法についてのご紹介です‼
●今回記事では、前回記事“型取り技法による陶彫作品の制作”の前段階である“石膏の雌型製作の方法について”解説させて頂ければと思います。ご興味のある方は是非参考にして頂ければ幸いです。
同型の陶芸作品を複数個複製したいとき、あるととても便利なのものが“石膏の雌型”になります。
一度石膏で雌型を製作してしまえば、複数個陶芸作品を制作する際に大幅な時間と労力の節約がもたらされます。
最初慣れるまでは中々根気のいる作業にはなりますが、一度慣れて覚えてしまえば、他の様々な作品複製技法にも応用できる、便利なだけではなくとても楽しく、何より作品制作の可能性を大幅に開拓する可能性を秘めた実践理論です。
①:粘土で石膏雌型の原型を制作する。
これから複製したい、陶芸作品の原型を粘土等で制作します。今回は原型制作に陶芸の陶土を使用しました。
粘土等で原型を制作する際に留意して頂きたいことは、※原形の形状は必ず抜き勾配になっていることです。そこさえ気を付けて頂ければ、後は“この原型が何個も増えていくんだ!”と楽しみながら自由に原型を制作して下さいね‼^^
以下に抜き勾配について説明させて頂きます。
●“抜き勾配”とは:抜き勾配とは、雌型からスムーズに作品が取り出せる作品の角度のことです。上の図に示されているように、図左側の抜き勾配では、雌型に対して原型が脱型(型から取り出すこと)の途中で引っかかることなくスムーズに取り出される勾配(角度)になっています。
●抜き勾配で原型作品を作るコツ:原型を作っている際に、作品を上から目視して、自分から見て一番奥の形から一番手前の形までに障害物がない状態に原型を作ることです。例えば上の図の左側の図で、原形の短い方の辺(原型がひっくり返したプリンだとしたらカラメルが乗っている方です!)から見て、いかなる障害物によっても遮られることなく、長い方の辺に至るまでの斜面がすべて見える状態であること、これが原型がいわゆる抜き勾配になっているということです。
●逆勾配(アンダーカット“undercut”)とは:逆勾配“undercut”とは、上の図の図右側に示されているように、原型(もしくは作品)を雌型から取り出したいときに引っ掛かりとなる勾配(角度)のことです。右図はundercutの極端な例ですが、この角度では、作品を原型から取り出すことは物理的に不可能です。そもそも、型取りしようにも粘土を型の中に入れることができませんね。^^;
※原型を作る際にこの抜き勾配について考慮せずに制作してしまうと、せっかく一生懸命作った原型を活かすことができないので、非常にもったいないです‼
②:石膏を流し込むための粘土の土塀を作る。
①で原型を制作した後、いよいよ型取り作業(石膏雌型を製作する作業)に取り掛かります。
まず、以下のものを揃えて下さい。
1:原型 (今回は陶土が原型。抜き勾配の形状で耐水性の有るものであれば、基本的に何でも原型になりえます。)
2:アクリル板やガラス板 (水を通さず、平らで丈夫な板)
3:水粘土 (液体状の石膏が流れ出さないようにするための土塀を作るのに用います。)
4:粉末状の石膏 (今回は「吉野石膏(株)の桜印焼石膏B級20㎏を使用)
5:ボウル (石膏と水を溶いて混ぜる際に使います。)
6:ヘラ (石膏を水と混ぜ合わせて液体状にするのに使います。)
7:コップ・粉末をすくえるもの (粉末状の石膏を袋の中からすくうのに使います。)
8:注ぎ口のついた器・入れ物 (水で溶いた液体状の石膏を流し込むのに使います。)
9:お水 (石膏と混ぜて、液体状の石膏を作ります。水道水でOKです!)
10:下に受け皿のついたザル (石膏型取り作業に使った道具類や手を洗う際に使います。※固まった石膏及び液状、粉末状の石膏は極力下水道に流さないように注意してください。下水管内で石膏が固まってしまい、下水管が詰まってしまいます。最悪下水管の取り換え大工事になり、すごくお金がかかってしまう場合も・・・!)
※使用した道具等を洗う際は必ず受け皿とザルを使って洗い、残った石膏はお住まいの自治体の指定に従って処分して下さい。
②-1:アクリル板の上に原型を置く。
②-2:流し込んだ石膏が隙間に入り込まないように、しっかりと目視して、原型と板の隙間を粘土で埋める。
原型と板の間に隙間ができないように粘土で埋めます。隙間があると流し込みの際に石膏が隙間に流れ込み、綺麗な雌型ではなくなってしまいます。
※また、この原型を板に固定する際にも再び念のため、アクリル板の水平に対して原型が抜け勾配になっていることを、四方から目視で確認して下さい。
②-3:石膏を流し込むための土塀を、粘土で作る。
作った土塀の中に液体の石膏が流し込まれることをイメージしながら、粘土で土塀を作ります。この土塀作りの際に留意して頂きたい点は以下の4点です。
1:流し込んだ石膏に耐えうる強度で作る。(土塀の崩壊は避けたいです‼)
2:土塀の内側をきれいに仕上げる。(内側表面の凹凸やムラをなくしておくと、石膏硬化(後で詳述致します)の後、粘土を取り除く作業が楽に行えます。)
3:土塀の高さを、流し込んだ石膏の水位が少なくとも原型を覆える高さに達することができる高さにする。(土塀の高さが十分にないと、原型を十分に覆う液体石膏を注ぎきることができません。)
4:石膏が漏れ出す隙間や穴はないか、最後に必ず確認する。
強度、内側の仕上げは問題ないか、気になる隙間や穴等はないか、確認する。
石膏を流し込んだ際の十分な高さが確保されているか、確認する。
③:石膏を流し込む。
原型、土塀の用意ができたら、いよいよ石膏の流し込み作業に入ります!
③-1:石膏と水を溶いて、液体状の石膏を作る。
流し込みのための液体石膏の作り方は以下の手順になります。
1:ボウルの中に水を張る。:この中に粉末の石膏を入れて溶くことを考慮して、ボウルの水位が約3分の1強~3分の2弱になるよう、水を張ります。
2:水を張ったボウルの中に粉末状の石膏を徐々に入れていく。:水の中に入れる石膏の量の目安は、“注いでいって水中にたまった石膏の表面の高さと水位が完全に一致したところまで入れる”、のが石膏最適量の目安です。
3:石膏と水を溶いてかき混ぜる。:石膏は、水と溶けあった瞬間に“化学反応”を起こして徐々に液体状→クリーム状→固体と固まっていく性質を持っています。
一般によく誤解されていることとして石膏が固まるのは決して水分が蒸発、乾燥して硬化する(固まる)のではなく、上述のようにいわゆる化学反応によって硬化し固体になります。石膏が水との化学反応によって硬化する際に発する熱を“硬化熱”といいます。実際に硬化している最中の石膏に触れると、熱を持っていることが確認できます。決して火傷するような高温ではなく、特に冬場や寒い時などはほんのり温かい温度です。
4:石膏が流動性を失う前の液体状~クリーム状の状態の内に、石膏を土塀の中へ注ぎ込んでください。この流し込みのタイミングが遅れてしまうと、原形の細かい凹凸まで十分に石膏を流し込み、綺麗な雌型となることができません。逆を言えば、適切に用いることにより石膏は原形のきわめて細かい細部まで型取りすることのできる、極めて優れた型取りの素材と言えます。
また、一度化学反応を起こし硬化した石膏は液体状には戻らないので、もしうっかり硬化させてしまったら、もう一度石膏と水を溶く作業を行って下さい。
※この際に絶対に留意して頂きたい点は、“入れた石膏と水面の高さが一致するのを確認するまで、石膏を入れる”前に、決して石膏と水を攪拌しないで下さい。そうしてしまうと、石膏で水が濁ってしまい、最適な石膏の量がわからなくなってしまいます。そのため、“石膏と水を溶いてかき混ぜるのは石膏表面が水面と一致してから”の原則を守って下さい。
石膏の量が最適でない場合、例えば水に対しての石膏の量が少ない場合は、いつまでも硬化せずに、手で強く握ると簡単にボロボロと崩れてしまいます。私柳田も一度石膏の量を間違えてしまい、“いつまでも固まらない石膏の粉地獄”に泣かされた経験があります・・・;;
④石膏雌型の完成
石膏を流し込んでから約40~50分程で石膏は完全に硬化します。完全硬化後に石膏雌型から粘土の土塀、原型を取り除きます。
その後、約1週間程乾燥させることにより、この石膏型の強度は完全硬化直後と比べておよそ二倍になります。
今回記事は、陶芸作品型取りのための石膏雌型の製作方法 the techniques of the way how to make plaster moulds for the cast potter´s clay articles from the clay prototypes.についてご説明させていただきました。
“陶芸作品を複製でたくさん作りたい‼”というガッツあふれる方のお役に立てればこれ幸いです。
今後とも当atelier kotarouは皆様の暮らしと気持ちを少しでも明るく、そして豊かなものにするお手伝いをさせて頂くべく日々何かその様な有益なものを作品、ウェブサイト等を通して皆様に提供させて頂ければ幸いで御座います。
今後とも、当atelier kotarou及び彫刻家柳田憲児を何卒宜しくお願い申し上げます。 柳田
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